目次
ファクタリング業者に関して調べていて「確定債権」という単語に行き着いたという方もいらっしゃるかと思います。売掛債権はあるものの、それが確定債権かどうか分からないという方もいらっしゃるかもしれません。
そこでこの記事では確定債権とは何かという点から、ファクタリングで取り扱える債権と取り扱えない債権などに関して情報をまとめていきたいと思います。
債権にはそれぞれ正確に書き表す文章もありますが、どうしても分かりにくい表現も多くなりますので、あくまでも分かりやすい言葉で表現していきたいと思います。
まずはファクタリングの基本的な仕組みを紹介しておきましょう。
ファクタリングとは、利用者が持っている売掛債権をファクタリング業者に譲渡(売却)し、債権を現金化する方法です。
仮にある企業A社が、取引先となる企業B社に対し商品を納入して売り上げが確定したとします。
日本の企業間取引では信用取引が一般的で、商品が納入された後にB社は商品代金を支払うことになります。A社は商品を納品した時点で、B社に対して売掛債権を持っている状態となります。
A社がこの売掛債権を、ファクタリング業者であるC社に譲渡(売却)して、C社から現金を受け取る。
これがファクタリングです。
A社はB社から入金されるよりも早く、債権を現金化することができます。
B社は入金期日までに商品代金を入金します。B社からの入金はC社へと渡ります。
A社はC社とファクタリング契約を結ぶ際、一定の手数料を支払うことになります。
ファクタリング業者であるC社の収入はこの手数料ということになります。
A社とC社の間で結ばれるファクタリング契約は2社間契約と呼ばれ、一般的な手数料は10~30%です。
仮にA社がB社に納品した商品代金が100万円、ファクタリング契約の手数料は15万円だったとしましょう。
A社の売り上げは100万円も、ファクタリング会社に手数料15万円を支払うため、収入は85万円となります。
金額は減るものの、B社から入金されるのを待つ必要がなく、最短で現金を手にすることができます。
B社は商品代金100万円を期日中に入金するだけですので損も得もありません。
ファクタリング会社であるC社は手数料15万円の収入があるということになります。
ファクタリングの基本的な流れを紹介しましたが、ここで「売掛債権」という単語の「債権」の部分にスポットを当ててみましょう。
一般的に債権は5つの種類に分けることができます。それぞれの特徴を紹介していきたいと思います。
まずは「確定債権」から説明します。
確定債権とは、商品等の納入が完了しており、あとは入金を末だけの状態の債権を指します。
債権を持つ企業は契約上やるべきことをすべて終えていることが条件となります。
仮に商品は納入済みであっても、納入した商品に不備があり、再納入の可能性がある場合などは確定債権とはなりません。
債権を持つ企業がすべきことを全て終わらせて、あとは入金を末だけの債権が確定債権です。
確定債権に対し、まだ納品が完了していない債権を「仕掛債権」と呼びます。
ただし、納品は終わっていないものの、納品することは決定していることが条件となります。
つまり商品の売買契約は締結しており、商品を納入しその後商品代金を受け取ることが決まっている債権ということ。
状況としては確定債権となる前の状態と考えれば大きく間違ってはいないでしょう。
確定債権の項で例に出したケース、商品の納入は済んでいるものの、商品に不備があった場合には再納入となる可能性がある状態は、仕掛債権の状態ということになります。
将来債権とは、将来的に受注を受けるであろう債権ということになります。
とはいえまったくの希望や推測では債権にはならず、基本的には定期的に、継続的に発生する債権が将来債権の対象となります。
もちろんその根拠となる契約書などが存在している必要がありますが、将来的にほぼ間違いなく発生する債権を将来債権と呼びます。
ここまでの3つの債権は企業間の取引における債権ですが、個人が企業から受け取る給与を債権と捉えたものが給与債権です。
あまり聞きなれない単語かと思いますが、確かに頻繁に活用されるものではありません。
例えば税金の未納や、慰謝料の支払い遅れなどが発生した場合、この給与債権を差し押さえることで回収するというケースがあります。
不良債権とはいわゆる貸し倒れと言われる債権です。
債務者である企業が、入金指定日までに支払いを行わなかった場合、その債権は不良債権となってしまいます。
持っていた債権も、債務者が倒産等で支払い不可となってしまった場合に不良債権となりますが、一度不良債権となってしまった債権は、回収が非常に難しい債権となってしまいます。
基本的な5種類の債権に関して紹介してきましたが、ファクタリング業者が取り扱う債権はこの中で2つだけです。
もちろん不良債権などは取り扱い対象にならないというのは想像できるかと思います。
では実際にファクタリング業者との契約に使用できる債権に関して紹介していきましょう。
一般的なファクタリング契約で、売買契約をされる債権は確定債権のみとなります。つまり債権者はすべての義務を果たしており、あとは入金が末だけの状態の債権のみが、ファクタリング契約で活用できるということになります。
仕掛債権のように納品が完了していない債権は、契約内容次第では納品前に契約自体がなくなる可能性もありますし、納品する商品代金が変更される可能性もあるため、ファクタリングでは取り扱うことができません。
ファクタリングはあくまでも債権を即現金化するのが目的。債権を買い取ったファクタリング業者としても、買い取った後に債権がなくなってしまったり、額面金額が変更されるようなことがあると業務上支障が出るため、仕掛債権は取り扱っていません。
長くファクタリングで利用できる債権は確定債権だけでしたが、2020年に行われた民法の改正により、将来債権もファクタリング対象とできるようになりました。
2020年意向はこうした将来債権を対象にするファクタリング業者も増えており、安定した取引契約のある企業にとって、ファクタリングはより利用しやすいシステムになっています。
最初に紹介したファクタリング取引のイメージでは、将来債権をどのように取り扱うのかが分かりにくいかと思いますので、より分かりやすいケースとして、将来債権の取り扱い方に関して紹介していきましょう。
同時に将来債権を利用する際のメリットやデメリットも紹介していきたいと思います。
将来債権でファクタリングを利用する場合、ファクタリングの上限金額は基本的に確定債権分の金額となります。
一例を挙げて説明すると、ある企業が毎月100万円の売り上げを継続的に受けているとします。
継続的に安定した金額が予想されますので、将来債権を持っているということになります。
この企業がファクタリングを利用した場合、ファクタリングで現金化できる債権は100万円が上限。
そこから手数料が引かれた分がファクタリング業者から即入金されるという形になります。
この時、将来債権を持っている場合、確定している当月の売掛債権から、50万円分のみをファクタリング業者に譲渡し、残りの50万円分は自社で受け取るという契約が可能。
そしてこの契約でもファクタリング業者から支払われるのは100万円分の債権から手数料を引いた分ということが可能になります。
仮に手数料が15%だった場合、85万円が入金されるということ。
つまりファクタリングを利用した企業は、ファクタリング業者からの85万円と、残っている売掛債権50万円分が受け取れるため、135万円を受け取ることが可能ということになります。
残りの50万円分は将来債権からファクタリング業者に支払うことになります。
つまり翌月の売掛債権100万円から50万円をファクタリング業者を支払うということです。
結果的には当月分の確定債権をファクタリングした場合と同じ金額を受け取り、同じ金額の手数料をファクタリング会社に支払うことになりますが、ファクタリング会社への支払いが分割という形になるため、資金繰りが非常に楽になるのが特徴です。
ただし、一般的に将来債権に関しては、確定債権のファクタリングよりも高い手数料が設定されていることが多いので注意が必要です。
上記の通り、確定債権でのファクタリングと比較すると、特に当月の資金繰りが楽になるのが将来債権を利用したファクタリングの大きなメリットです。
反面デメリットがあるのも間違いありません。それが手数料の高さです。
また、将来的に一定期間にわたって売掛債権の一部をファクタリング業者に入金する必要があるため、利用した場合、その先数か月間は反対に資金繰りが厳しくなるのも事実です。
将来債権に限らず、ファクタリングの過度な利用は後々経営に影響を及ぼす可能性があります。
ファクタリング業者に手数料を支払う必要があり、その手数料分経営が厳しくなるのは自明の理です。
特に将来債権のファクタリングはその手数料が高いため、恒常的に利用するようになってしまうと、将来的に行き詰ってしまう可能性があります。
将来債権を利用したファクタリングは奥の手とし、例えば経営拡張で一時的に資金が必要であったり、設備投資金がどうしても必要なケースなど限定で利用するのがいいでしょう。
少々話は逸れますが、債権とファクタリングということで、給与債権を利用した個人ファクタリングに関しても解説していきましょう。
最初に結論を書いてしまいますが、基本的には利用することはおすすめできません。
もちろん給与ファクタリングで助かるというシーンはあるかと思いますが、それでも推奨できないのは理由があります。
そこで給与ファクタリングの仕組みや、なぜ推奨しないのかその理由を紹介していきましょう。
給与ファクタリングも、基本的には企業が利用するファクタリングと同じ仕組みです。
ある企業と雇用契約を結び、安定した給与がある社会人の方が、その給与債権をファクタリング業者に売却し、即現金化するのが一般的な仕組みです。
簡単に言ってしまえば給料の前借りです。
その前借りに手数料が発生するのが給与ファクタリングということになります。
この給与ファクタリングに関してはいくつかの判例も存在し、裁判所の判断は基本的に違法というもの。
実際に処分を受けた事業者もあります。
では企業間のファクタリングは合法で、給与ファクタリングが違法になるのはなぜでしょうか?
給与ファクタリングは、裁判所の判断では「貸し付け」にあたるとされています。
つまり給与ファクタリングができるのは、貸金業者として登録をしている業者のみということです。
一方企業間のファクタリングは、債権の譲渡契約(売買契約)であり、合法であるというのが法の判断。
ここが大きく違うところです。
実際に摘発された給与ファクタリング業者は、貸金業者として登録をしていない、つまり闇金であったために摘発されたということになります。
では貸金業者であれば給与ファクタリングは可能かということになりますが、可能ではあるものの、それはいわゆる貸し付けであるため、特に給与ファクタリングという名称で行っていないというのが現状です。
闇金業者など、貸金業者として金融庁に登録をせずに給与ファクタリングを行っている業者も少なくありません。
こうした業者を調べてみると、手数料は15~20%となっています。
消費者金融などを利用したことがある方はご存じかもしれませんが、一般的な消費者金融の課す金利は18%程度、そう考えると、消費者金融と変わらないと思われるかもしれませんが、これは大きく違います。
貸金業法で定めている上限金利は、貸付金額が10~100万円の範囲の場合18%。
ただしこれは「年利」です。つまり1年間で18%の金利が付くということです。
仮に50万円を借り入れた場合、1年間で9万円が金利となります。
1ヶ月で計算すると約7,400円程度ということになります。
しかし給与債権を利用した給与ファクタリングでかかる金利は「月利」です。
1ヶ月で15~20%の金利がかかることになります。
こちらも50万円・金利15%で計算すると手数料は75,000円。
これを年利で計算し直すと、約183%というとんでもない金利になってしまいます。
給与ファクタリングという名称で貸し付けを行っている業者は闇金など違法業者が多く、かかる金利もとんでもない高額となります。
どれだけ厳しくとも給与ファクタリングを推奨しない理由はこの違法性と異常金利が大きな理由となります。
ファクタリングとは売掛債権を早期に現金化することで、企業の経営に必要な資金を確保する非常に便利な方法です。
売掛債権にはいろいろな種類がありますが、ファクタリングで利用できる債権は確定債権が基本となります。
つまり商品の納品等すべての義務を終え、あとは入金を待つだけの債権が対象ということになります。
2020年の民法改正で、この確定債権に加えて将来債権もファクタリング対象とすることができるようになりました。
将来債権でファクタリングを利用することで、より資金面では楽になるケースはありますが、長期間にわたって支払いが続くことになりますので、計画的に利用することが重要になります。
債権には給与債権や不良債権などもありますが、こうした債権はファクタリングには利用できません。
給与債権を利用した個人向けのファクタリングも存在はしていますが、基本的に利用は推奨しません。
給与ファクタリングは違法業者が取り扱ってるケースが多く、その手数料も暴利とも呼べるほどの高金利となりますので、利用しないようにしましょう。
銀行融資が通らなかった場合など、手元に確定債権があるようであればファクタリングを利用するのもおすすめです。
ファクタリングは貸し付けではありませんので、上手に活用すれば企業にとっても大きなプラスになるでしょう。