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将来債権でもファクタリングは利用できる?将来債権ファクタリングのメリットとデメリットを解説

売掛債権の譲渡・売却による資金調達方法である「ファクタリング」。利用者の経済状況が重要視されないため、赤字決算や税金滞納などがあっても資金調達できる可能性が高く、近年注目を集めています。通常のファクタリングで買取対象となるのは「確定債権」つまり、サービス提供後に請求日や請求額が確定した債権となります。では、将来発生する予定がある「将来債権」の場合、ファクタリングは利用できるのでしょうか?この記事では、将来債権の概要や、将来債権でもファクタリングが利用できるのかどうかを解説します。

将来債権とは

将来債権とは「将来発生する予定の売掛債権」のことです。
通常、売掛債権は、商品やサービスを提供して、請求日や請求額が確定しなければ生じません。対し、将来債権は、商品やサービスの提供前、つまり、契約が成立した時点で発生することになります。一般的には、継続取引から反復的に発生する債権と認識しておけば、間違いないでしょう。

例えば、1年間毎月20万円の商品を提供する契約を結んだとしましょう。
その場合、実際には商品の提供や入金日が決定されていなくても、おおよそ1年間は将来的な支払いが確定されているとみなせるのです。この「確定はしていないものの高い確率で将来的に支払われる予定のある債権」が将来債権ということです。

将来債権はファクタリングに利用できる?

通常のファクタリングは、原則「確定債権」を買取対象としています。そのため、商品やサービスを提供した後、つまり請求書を発行した後にしか利用することはできません。通常のファクタリングでは「将来債権」を譲渡・売却することはできませんが、「将来債権ファクタリング」と呼ばれるサービスであれば、将来債権の譲渡・売却も可能です。

将来債権ファクタリングは、契約や発注が成立していることを証明することで、利用できるようになります。ここからは、将来債権でもファクタリングを利用できる理由を解説しましょう。

将来債権の譲渡は可能

通常のファクタリングも、将来債権ファクタリングも、ファクタリング会社へ債権を譲渡することで取引が成立します。売掛債権の譲渡は、民法第466条「債権の譲渡性」により認められている行為です。将来債権の譲渡に関しても、昭和53年12月15日に最高裁判所により、将来債権の譲渡に関する有効性を認める判決がされました。この判決結果からも、将来債権を譲渡する「将来債権ファクタリング」は有効であることが説明できるでしょう。

遠くない将来に確実に回収できる債権に限られる

将来債権の譲渡は、法律的にも認められている行為です。将来債権の譲渡自体は、約8年先の債権まで可能ですが、将来債権ファクタリングにおいては1年を超える債権の買取はほぼできません。
と言うのも、ファクタリングは償還請求権のない契約が原則だから。万が一、債権が不履行になった場合でも、ファクタリング会社は利用者に弁済を求めることができないのです。将来債権は、請求が確定しているわけではないため、売掛債権よりも未回収リスクが高いと言わざるを得ません。そのため、将来債権ファクタリングでは、1年未満の将来債権が買取対象となることが多いです。あくまで、遠くない将来に確実に回収できる債権に限られるため、注意しましょう。

将来債権ファクタリングの仕組み

将来債権ファクタリングの仕組みを解説する前に、通常のファクタリング(2社間ファクタリング)の仕組みをおさらいしておきましょう。

【通常のファクタリングの仕組み】
1,商品やサービスの提供後、売掛債権が発生する
2,利用者はファクタリング会社へ、売掛債権の譲渡・買取を依頼する
3,ファクタリング会社は審査後、買取金(売掛金−手数料)を利用者へ支払う
4,実際の決済期日に売掛先から利用者へ、売掛金が支払われる
5,利用者は回収した売掛金をファクタリング会社へ返還する

通常のファクタリングは、商品やサービスを提供した後で発生する「売掛債権」をファクタリング会社へ、譲渡・売却します。そして、本来の決済期日に回収した売掛金を、ファクタリング会社へ一括で返還することになります。

【将来債権ファクタリングの仕組み】
1, 利用者からファクタリング会社へ将来債権の譲渡・買取を依頼する
2, ファクタリング会社は審査後、買取金(売掛金−手数料)を利用者へ支払う
3, 利用者は売掛先に商品やサービスを提供し、請求書を発行する
4, 売掛先が利用者に売掛金を支払う
5, 利用者は回収した売掛金をファクタリング会社へ返還する

通常のファクタリングとの違いは「利用時に売掛債権が発生しているかどうか」ということ。将来債権ファクタリングでは、請求が確定する前にファクタリングの申し込みや、資金調達ができます。そして、実際に商品やサービスを提供し、確定した売掛金を請求・回収してからファクタリング会社へ返還します。複数の将来債権を売却した場合、売掛金の回収も複数回発生することになるでしょう。回収した売掛金から順次返還していくことになるため、一度でまとまった資金を調達し、回収した売掛金を毎月一括返還することになります。一括返還ではあるものの、長期的かつ複数回で返還できるため、資金繰りの逼迫を避けられるかもしれません。

将来債権ファクタリングの実例

将来債権ファクタリングの実際の流れを、実例をもとに解説します。

例)300万円の将来債権(月100万円×3ヶ月)を手数料20%で現金化する場合
・手数料:将来債権300万円×手数料20%=60万円
・早期現金化額:将来債権300万円−手数料60万円=240万円

将来債権ファクタリングを利用すれば、240万円というまとまった金額を一度で資金調達できます。実際の売掛金の回収は100万円ずつとなるため、返還も100万円ずつ3ヶ月に渡り返還することになります。まとまった資金を一度で調達できますが、返還は1ヶ月ずつとなるため、利用者の負担は少ないと言えるでしょう。

将来債権ファクタリングの2つのメリット

通常のファクタリングは「確定債権」しか売却できませんが、将来債権ファクタリングは「未確定の債権」を売却できます。通常のファクタリングよりも早い段階でファクタリングを利用できるため、得られるメリットも大きいです。ここでは、将来債権ファクタリングのメリットを解説します。

将来債権ファクタリングのメリットは、以下の2つです。
1, 資金繰り改善に期待できる
2, まとまった資金を調達できる

1,資金繰り改善に期待できる

将来債権ファクタリングを活用すれば、資金繰りの改善に期待できます。
通常のファクタリングの場合、一度限りの取引では得られる資金が少なく、その場しのぎの資金調達になることも少なくありません。対し、将来債権ファクタリングでは、将来発生する予定の数ヶ月分の債権を現金化することができます。その場しのぎの資金繰り問題の解消ではなく、支払い・入金サイクルを改善し得ます。結果として、長期的な資金繰り改善にも期待できるでしょう。

2,まとまった資金を調達できる

将来債権ファクタリングを活用すれば、まとまった資金の調達ができます。
通常のファクタリングの場合、確定債権しか売却できないため、保有している売掛債権次第では、希望額に満たないということもあるかもしれません。故に、根本的な資金繰り問題を解決できず、毎月ファクタリングを利用しなくてはならない状況に陥りやすいです。対し、将来債権ファクタリングでは、まだ確定していない債権を含め合算して現金化することができます。通常のファクタリングよりも、まとまった資金を調達しやすいと言えるでしょう。まとまった資金で、事業の拡大や初期投資などを行うことで、効率的に資金繰りを回すことにも期待できます。

将来債権ファクタリングの4つのデメリット

将来債権ファクタリングを活用すれば、まとまった資金を得ることもできますし、その資金をもとに資金繰り改善や事業拡大にも期待できます。さまざまなメリットがありますが、デメリットにも注意しなければなりません。

将来債権ファクタリングのデメリットは、以下の4つです。
1, 手数料が割高
2, 審査が厳しい
3, 将来債権に対応しているファクタリング会社が少ない
4, 資金繰りを逼迫する可能性がゼロではない

1,手数料が割高

将来債権は、将来発生する予定のある債権であり、あくまで確定していない債権となります。そのため、売掛債権よりも未回収リスクが高いと言わざるを得ず、ファクタリング会社にとってはリスクの高い取引となります。
ファクタリングは、償還請求権のない契約が原則。故に、売掛金の未回収リスクが高い取引では、高手数料を避けることはできません。将来債権ファクタリングは、通常のファクタリングよりも手数料が割高になり易いことは、理解しておきましょう。

2,審査が厳しい

将来債権ファクタリングの審査は、厳しい傾向にあります。
と言うのも、将来債権は確定していない債権だから。債権発生が確約されているか、長期的に見ても経営が安定している売掛先なのかを、厳重に調査する必要があります。利用者と売掛先との取引関係や、利用者の経済状況も多少なりとは審査に影響するため、通常のファクタリングよりも審査は厳しいと言えるでしょう。

将来債権に対応しているファクタリング会社が少ない

将来債権ファクタリングは、未回収リスクが低いとは言えない取引です。そのため、ファクタリング会社からすると、取り扱いたくない取引とも言えるでしょう。将来債権の買い取りに対応しているファクタリング会社は、少ないのが現状です。
将来債権を活用して資金調達したくとも、対応しているファクタリング会社が近くになく、利用できないということもあるでしょう。

資金繰りを逼迫する可能性がゼロではない

将来債権ファクタリングは、活用方法次第では、資金繰りが逼迫する可能性も否定できません。
将来債権ファクタリングは、確定していない債権をまとめて現金化できます。しかし、あくまで先払いを受けられるだけなので、早期現金化した分の代金は、本来の決済期日には得ることができません。つまり、3ヶ月分の将来債権を現金化した場合、早期に3ヶ月分の売掛金を得られる反面、向こう3ヶ月はその債権からの収入はないということになります。1つの企業との間にしか将来債権がない場合、返還期間中に資金繰りが悪化する可能性もあるでしょう。将来債権ファクタリングを利用する際には、長期的な資金繰りを考える必要もあるため、注意しましょう。

将来債権でもファクタリングは利用できます

債権自体は発生していないものの、将来的に発生する予定のある債権を「将来債権」と言います。将来債権でも、1年未満に確約する可能性の高い債権であれば、ファクタリングを利用することは可能です。まとまった資金を調達できるため、資金繰りに余裕ができたり、事業拡大できたりと、得られるメリットは大きいでしょう。しかし、将来債権の買い取りに対応しているファクタリング会社が多くない点や、手数料が割高になる点には注意が必要です。将来債権を複数保有している場合には、注意点に気をつけながら、将来債権ファクタリングを活用するのも良いかもしれません。

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