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「今日中に現金が必要」「銀行融資に断られてしまって困っている」このような状況では、ファクタリングが役立ちます。ファクタリングは、売掛債権の譲渡・売却による資金調達方法であり、借入にはなりません。そのため、銀行融資よりも審査が柔軟であり、なおかつ短時間で資金調達が完了します。ファクタリングを利用する際には、ファクタリング契約を結ぶことになりますが、契約時の流れがわからないために不安を感じるという方もいるでしょう。
この記事では、ファクタリング契約の流れを6ステップで解説します。また、ファクタリング契約に必要な書類や、契約書で確認すべき項目も併せて解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
ファクタリングとは、事業主が保有する売掛債権を、ファクタリング会社へ譲渡・売却することで、決済期日前に売掛金を現金化できるサービスです。銀行融資を受けられなかったり、赤字決算や税金滞納があったりする場合でも、利用できる可能性が高く、近年注目を集めています。
しかし、まだまだ認知度が高い資金調達方法とは言えず、契約時の流れを知らない方も少なくはありません。ここでは、ファクタリング契約を結ぶ際の流れを、6ステップで解説します。
ファクタリング契約の流れは、以下の通りです。
1, 利用者が申し込みをする
2, ファクタリング会社へ必要書類を提出する
3, ファクタリング会社が審査を行う
4, ファクタリング契約を結ぶ
5, ファクタリング会社から利用者へ買取金が入金される
6, 売掛金をファクタリング会社へ返還する
まずは、利用したいファクタリング会社へ、債権譲渡・買取の申し込みをします。
ファクタリングの申し込みは、来店や電話、メール、LINE、郵送、インターネットのいずれかの方法で行うことが可能です。資金調達を急いでいる場合には、LINEやインターネットで申し込みをするのが良いでしょう。ネット上での申し込みなら、物理的なタイムラグがかからず、スピーディな資金調達に期待できます。
また、なかには、申し込み後にキャンセルができないファクタリング会社もあります。無料見積もりを行なっていることがほとんどなので、利用前に複数社で見積もりを取り、比較してから申し込めると良いでしょう。
申し込みが完了したら、ファクタリング会社の指示に沿って必要書類の提出をします。
直接ファクタリング会社へ持ち込む場合もあれば、郵送やメール送付、オンライン上の専用フォームへ添付するなど、提出方法はさまざまです。詳細は次項で解説しますが、ファクタリング契約時には、利用者の身分証明書と請求書、取引に用いている通帳のコピーは、最低限提出しなければなりません。スムーズな取引を行うためにも、事前に必要書類の種類を確認し、準備しておけると良いでしょう。
なお、売掛先もファクタリング契約に参加する「3社間ファクタリング」では、債権譲渡に関する承諾書も必要となります。ファクタリングを申し込む時点で、売掛先へファクタリング利用に関する打診を行い、承諾を得ておけると良いでしょう。
すべての必要書類の提出が完了したら、ファクタリング会社により審査が行われます。
ファクタリングの審査では「売掛先の信用度」つまり、売掛先がきちんと売掛金を支払えるかどうかが重要となります。売掛金の未回収リスクが低ければ手数料は低くなり、未回収リスクが高ければ審査落ちもしくは高手数料になるでしょう。
また、先に提出した書類だけでは正確な判断ができない場合には、追加資料の提出を求められることもあります。追加資料を提出すれば、審査通過できたり、好条件でのファクタリング契約を結べたりする可能性もあります。追加書類の提出を求められた際には、可能な限り応じるようにしましょう。
無事審査に通過できたら、いよいよファクタリング会社とファクタリング契約を結びます。
ファクタリングでは、売掛債権の「譲渡・売買契約」を結ぶことになります。ファクタリングを称して高金利貸付を行うような悪質業者は「金銭消費賃借契約」を結ばせるため、契約内容には注意するようにしましょう。
また、手数料設定や資金調達可能額など、契約内容に納得のいかない場合には、契約を結ばないという選択も可能です。契約書に署名する前に、契約書の内容は必ず確認しましょう。
なお、2社間ファクタリングでは、利用者とファクタリング会社の間で契約を結ぶことになります。3社間ファクタリングでは、利用者とファクタリング会社間だけでなく、ファクタリング会社と売掛先との間にも契約を結ばなければなりません。ファクタリング方式により、契約に関わる会社数や契約の手間が変わるため、注意しましょう。
無事に契約が締結されたら、ファクタリング会社から利用者の指定口座へ買取金が入金されます。
ファクタリングで早期現金化できる金額は、「買取額から手数料を差し引いた額」となります。売掛債権満額に対して70%〜90%の掛け目がかけられ、そこから1%〜30%の手数料が差し引かれるため、目減りは避けられません。売掛債権の額面満額の資金調達はできない点には、注意が必要でしょう。
なお、資金調達完了までに要する期間は、ファクタリング方式により異なります。
・2社間ファクタリング:最短即日〜3日
・3社間ファクタリング:最短3日〜1週間
資金調達を急いでいる状況では、2社間ファクタリングを利用するのが良いでしょう。
売掛金をファクタリング会社へ返還することで、取引は完了となります。
ファクタリングは「一括返還」が原則です。そのため、本来の決済期日に、売掛金をファクタリング会社へ返還しなければなりません。実際には、契約書内で「決済期日〜1週間以内」に返還するなど、返還する期間が決められています。返還期限を確認し、契約書で取り交わした期限内に、返還するようにしましょう。返還が遅れた場合には、違約金や遅延損害金が発生するため注意が必要です。
売掛先の経営難や倒産などにより返還が難しい場合には、その事実が発覚した時点で必ずファクタリング会社へ一報入れるようにしましょう。
なお、2社間ファクタリングは、売掛先が契約に参加しない方式であるため、利用者が返還作業を行わなければなりません。決済期日に売掛先から売掛金を回収でき次第、速やかにファクタリング会社へ返還するようにしましょう。3社間ファクタリングは、売掛先がファクタリング会社へ直接返還作業を行うため、利用者は特になにもする必要はありません。
ファクタリングを利用する際には、必ず審査が行われます。審査では、提出書類と面談(不要な場合もある)により売掛金の未回収リスクが判断され、利用の可否や手数料が決められます。ここからは、ファクタリング契約で提出を求められる書類について、解説していきましょう。
ファクタリング会社により、提出を求められる書類の数や種類は異なります。しかし、すべてのファクタリング会社で提出が必須とされる書類もあります。どのファクタリング会社も利用しても、以下の3点は必ず提出を求められるため、前もって準備しておきましょう。
ファクタリング契約で提出が必須となる書類は、以下の3点です。
・買取希望の売掛債権を証明できる「請求書」
・利用者本人の「身分証明書」
・商取引に使用している「通帳のコピー」
ファクタリングは、売掛債権の譲渡・売却による資金調達方法であり、売掛債権の存在を証明できないことには利用できません。そこで、確実に売掛債権が発生していることを証明するために「請求書」が必要となります。
また、虚偽の申請や第三者によるなりすまし防止のため、利用者の本人確認ができる「身分証明証」の提出も必須でしょう。
さらには、ファクタリングの審査で最も重要となる売掛金の未回収リスクを判断するために、商取引に使用している「通帳のコピー」も必須となります。通帳のコピーから、過去の取引における売掛金の未払いや支払い遅れの有無、定期的な取引の有無を確認することで、売掛金の未回収リスクが判断できるのです。
請求書と身分証明書、通帳のコピーは、ファクタリング契約を結ぶ上で必ず必要になります。しかし、上記の3点だけあれば、必ずファクタリング契約を結べるというわけではありません。ファクタリング会社により、その他の書類の提出を求められることもあります。また、審査を行なっていく中で、情報の不足を補うために、追加書類の提出が必要になることもあるかもしれません。ファクタリングを利用する際には、利用を検討しているファクタリング会社の必要書類を事前に調べることで、スムーズな契約に期待できるでしょう。
ファクタリング契約を結ぶうえで、提出を求められる可能性がある書類は以下の通りです。
・商業登記簿謄本
・印鑑証明書
・決算報告書
・売掛先との基本契約書
・成因資料(納品書、発注書など)
・エビデンス資料(売掛先とのやりとりのメール、会社のホームページなど)
商業登記簿謄本や印鑑証明書は、法務局で取得する必要がある書類です。取得には発行費用と時間がかかるため、注意しましょう。また、決算報告書は前期分だけ求められることもあれば、過去3期分を求められることもあります。詳細は、ファクタリング会社に確認し、できる限り提出するようにしましょう。
審査に通過し、あとは契約書で契約を取り交わすだけ、と安心するのは少し早いかもしれません。と言うのも、ファクタリング業界には、悪質業者も存在するから。申し込み時や契約時に口頭で説明していた内容と、契約書の内容が異なるというケースも散見されています。悪質業者は、口頭では好条件での契約内容を説明し、契約書内では高手数料や高諸費用を請求する手口をよく用います。
悪質業者に騙されて違法紛いの契約を結ばないよう、契約書では以下の9項目は必ず確認するようにしましょう。
1, 償還請求権の有無
2, 債権譲渡通知の有無とファクタリング方式
3, 債権譲渡登記の有無
4, 手数料と入金額
5, 担保の有無や契約内容
6, 報告義務の条件
7, 損害賠償、違約金の発生条件
8, 契約解除の条件
9, 契約期間と解約方法
償還請求権の有無の確認は、非常に重要です。
ファクタリングは「償還請求権のない契約」が原則となります。償還請求権とは、譲渡・売却した売掛債権が不履行になった際に、ファクタリング会社が利用者へ弁済を求めることのできる権利のこと。ファクタリングはこの権利がない契約であるため、万が一売掛先の倒産などで売掛金を回収できなくなっても、利用者は弁済をする必要はありません。
償還請求権のある契約の場合、売掛債権を担保にした貸付とみなされます。貸付でファクタリング同様の手数料設定をした場合、利息制限法違反となります。契約書では「償還請求権がない」ことを必ず確認しましょう。
債権譲渡通知の有無とファクタリング方式の確認も重要です。
ファクタリングには、売掛先への通知を行わない「2社間ファクタリング」と、売掛先への通知を行う「3社間ファクタリング」があります。ファクタリングは、まだ認知度が高いとは言えない資金調達方法であり、売掛先へファクタリングの利用を知られたくないという方も少なくはありません。実際、ファクタリングを利用する方の8割は、売掛先へ通知を行わない2社間ファクタリングを選択しています。
2社間ファクタリングの利用を希望しているにも関わらず、契約書で3社間ファクタリングの契約になっていたというケースも稀にあります。その場合、売掛先へ通知が届いてしまい、ファクタリング契約を結んだ旨を知られてしまいます。資金繰り悪化を疑われるなど、取引関係に悪影響を及ぼす可能性もゼロではありません。トラブルを回避するためにも、希望したファクタリング方式であるかどうか、必ず確認するようにしましょう。
2社間ファクタリングを利用する際には、債権譲渡登記の有無の確認も重要です。
債権譲渡登記とは、利用者が保有している売掛債権をファクタリング会社へ譲渡する旨を、公的に証明するためのもの。二重譲渡や売掛金の持ち逃げ防止のために、債権譲渡登記を求められることも少なくありません。しかし、債権譲渡登記は法務局で一般閲覧可能なものであり、売掛先が閲覧した場合に限り、2社間ファクタリングでもファクタリングの利用を知られてしまうのです。
絶対に売掛先へファクタリングの利用を知られたくない場合には、債権譲渡登記に留保してくれる会社を利用するようにしましょう。そして、契約書内でも債権譲渡登記に留保しているのか、必ず確認してください。
手数料の確認も必ず行いましょう。
ファクタリングの手数料は、資金調達できる金額に直結するものです。2社間ファクタリングで10%〜30%、3社間ファクタリングで1%〜10%が手数料相場となります。相場の範囲内の手数料設定であるか、必ず確認しましょう。
また、悪質業者は手数料を相場の範囲内にとどめ、その他諸費用で高額請求してくることもあります。手数料の確認はもちろん、その他諸費用で不透明な請求をされていないか、実際に振り込まれる金額はいくらなのか、必ず確認してください。
担保の有無や契約内容の確認も、非常に重要です。
ファクタリング契約は、原則担保や保証人は必要ありません。売掛債権の譲渡・売却による資金調達方法であるため「債権譲渡契約」や「売買契約」を結ぶことになります。悪質業者は、ファクタリングを謳いながら高金利貸付をしてくることがほとんど。契約書に「金銭消費賃借契約」と書かれている場合、それはファクタリングではなく、悪質業者による貸付契約で間違いありません。貸付と思われるような契約内容ではないか、今一度確認しましょう。
報告義務の条件を確認しておくことも大事です。
2社間ファクタリングは、売掛先が契約に関与しないため、ファクタリング会社が売掛先へ接触することができません。そのため、売掛先の経営が傾いていることや、売掛金が支払えないかもしれないことを知る術もありません。つまり、ファクタリング会社よりも利用者の方が、売掛先の経営状況に詳しいということになります。
売掛金を決済期日までに回収できなさそうなことが発覚した場合、速やかにファクタリング会社へ報告するようにしましょう。報告義務を怠ったことが原因でファクタリング会社に損害が生じた場合、損害賠償請求される可能性も否定できません。報告義務の条件を確認し、条件に該当するような状況になった際には、必ず報告義務を守るようにしましょう。
損害賠償や違約金の発生条件の確認も重要です。
ファクタリング契約は、利用者とファクタリング会社間の信頼によって成り立つ取引です。どういった条件で損害賠償や違約金が発生し、いくら支払わなければならないのか、しっかり把握しておきましょう。
また、損害賠償や違約金の負担額が極端に高かったり、発生条件が厳しすぎたりする場合には、利用者にとって不利な契約となりかねません。あまりにも条件が厳しい場合には、契約を見送る検討も必要となるでしょう。
契約解除の条件もしっかりと確認しておきましょう。
ファクタリング契約中に、利用者による重大な契約違反などがあった際には、契約が強制解除になることもあります。強制解除になった場合には、売掛債権の売却により得た代金を、早々に返却しなければなりません。どのようなケースが「重大な契約違反」に該当するのか、事前に確かめるようにしましょう。
契約期間と解約方法の確認も重要です。
ファクタリングは、1回の取引で契約が終了するのが一般的。しかし、なかには継続利用することを前提として、契約を結ぶケースもあります。自動更新であったり、更新手数料が発生したりする場合もあるため、契約期間と解約方法はしっかりと確認しておけると良いでしょう。
ファクタリングを利用する際には、いくつか注意すべき点も存在します。契約時だけでなく、契約後にも注意することがあるため、詳しく解説していきます。
ファクタリング契約における注意点は、以下の2つです。
1, 契約書の控えを必ずもらう
2, 取引終了後に債権譲渡登記を抹消する(2社間ファクタリングのみ)
ファクタリングを利用する際には、必ず契約書の控えをもらいましょう。
ファクタリングの買取対象である売掛債権は、手形のように実物があるものではありません。そのため、ファクタリングを利用する際には、契約書を取り交わすことで、債権譲渡の事実を公的に証明することになります。つまり、契約書は、万が一トラブルが生じた場合に、契約内容や契約した事実を証明する唯一の存在と言えるのです。契約書の控えがなければ、証拠になり得る書類がないも同然であり、泣き寝入りするしかありません。
悪質業者は、印刷代の節約など適当な理由をつけて、契約書の控えをくれないことも多いです。そして、利用者が署名したのちに、利用者に不利になるような内容に改ざんする手口を用います。どんな理由であれ、契約書の控えをくれない業者とは、契約を結ばないようにしましょう。そして、契約書の控えは取引が完了するまで、大切に保管するようにしてください。
2社間ファクタリングでは、取引終了後に債権譲渡登記を抹消する必要があります。
万が一抹消し忘れてしまった場合、他社でファクタリングを利用する際に、二重譲渡を疑われかねません。最悪の場合、裁判沙汰にもなることもあるため、債権譲渡登記は必ず抹消するようにしましょう。
また、ファクタリング取引終了後も、売掛先が債権譲渡登記を閲覧すれば、過去にファクタリングを利用した事実は知られてしまいます。売掛先との取引関係の悪化防止のためにも、取引終了後は速やかに債権譲渡登記の抹消をすることをおすすめします。
ファクタリングは、まだまだ認知度が高いとは言えない資金調達方法です。しかし、銀行融資を断られていても利用できたり、最短即日で資金調達ができたりすることから、近年利用者が増えてきています。ファクタリングの契約方法や契約時に必要な書類、契約時の注意点などを把握していれば、安心してファクタリング契約を結べるでしょう。ファクタリング業界には、悪質業者も存在するため、契約書の内容をしっかりと確認するよう気をつけてください。