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ファクタリングを活用する際には会計処理をしなければいけません。しかし、具体的にどのようにして仕分けを行えばいいのか悩む場面は多いでしょう。正確な仕分けをしなければ、税務調査を受けるリスクがあります。本記事ではファクタリングの会計処理について、知っておきたいポイントを解説しました。
ファクタリングには保証型と買取型があります。保証型は自社の債権に対して保険をかけて、債務者の倒産などで債権が回収できなくなったときに保証限度額内で債権の支払いを受けられるのが特徴です。
一方、買取型は債権を業者に売却して、手数料を差し引いた差額を受け取ります。また、買取型は自社とファクタリング業者が二者間で契約するケースと、債務者を交えて三者間で取引するケースの2パターンがあります。
それぞれのパターンごとに会計処理の方法は異なるため注意しましょう。
保証型では売掛金を回収できなくなったときに保険金を受け取ります。保証型の場合は契約をした時点では特に仕分けの必要はありません。その段階では特に会計上のイベントは起きていないからです。実際に売掛金が期日までに支払われなくなったときなどに入金されます。
まず、最初の仕分けでは貸倒損失として売掛金が回収不能になったという計上を行い、ファクタリング業者から受け取った保証分の金額は雑収入として処理するのが一般的です。
また、売掛金が無事に入金された場合は、単に保証料を支払い手数料として計上します。掛け捨て型の保険と同じ扱いと考えましょう。保証料はリスクの高い企業と取引している場合に高くなりやすいです。貸倒れが起きなければ保証料は無駄になるのですが、もしものときのリスクに備えられるため利用している企業はたくさんあります。
買取型の注意点として、債権がファクタリング業者へ移転されたのかが問題視されます。企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準9項において、基準が示されているのです。重要なポイントは以下の2点になります。
譲渡した債権に対する譲受人の権利が譲渡人及び債権者から法的に保全されていること
譲渡人が譲渡した債権を買戻す権利を有していないこと
以上の点を満たしているならば、売掛債権がファクタリング業者へ移転したとみなせます。
上記の基準のうち「法的に保全」というのは、2社間ファクタリングで問題になります。売掛債権を買取した業者が債権の所有権を主張するためには第三者対抗要件が必要です。そこで、債権譲渡の登記が「法的に保全」されているかどうかの基準となります。債権譲渡の登記をしていない場合は「法的に保全」されているとみなされないため、金融取引として扱われるのです。
また、第三者取引の場合は、そもそも債務者に了承を得ているため、債務者への対抗要件は成立しています。売掛先企業へ売掛債権の譲渡を証書により通知するか、売掛先企業より証書によって承諾を得ることで第三者に対抗できるのです。
「買戻す権利」については、通常買取型のファクタリングでは買戻特約を付けません。買戻特約とは、売掛金の支払先が不渡りや不払いになったときに売掛金の買い戻しを請求できる権利のことです。買戻特約を付けない場合は利息制限法が適用されないため、手数料が高額になる可能性があります。一方、買戻特約を付ける場合は金融取引となり、利息制限法が適用されるため手数料が低くなるのがメリットです。
2社間ファクタリングでは売買取引と金融取引のどちらで判断されるかにより仕分けの仕方が異なります。それぞれの仕分けの方法について解説しましょう。
売買取引として2社間ファクタリングの契約をする際には、以下の4つの段階で仕分けが必要になります。
1. ファクタリング契約締結時
2. ファクタリング会社からの入金
3. 債務者からの入金
4. ファクタリング会社への返金
1のときの仕分けでは売掛金を譲渡して未収入金を仕分けします。そして、2の段階ではファクタリング会社から手数料を差し引いた金額を受け取り、受け取った未収入金は現金預金と売上債権売却損として計上するのです。手数料分は売上債権売却損として仕分けしています。
3の段階では債務者からの入金を預り金として計上して、ファクタリング会社に返金する際には預り金を減少させるという仕分けをするのです。
金融取引として2社間ファクタリングをする場合には契約締結時に仕分けを行いません。売掛金の譲渡を実行していないからです。
そしてファクタリング会社からの入金は、短期借入金として処理します。その後は債務者からの入金を現金預金として計上して、ファクタリング会社に返金をすることで短期借入金を減少させる仕分けをするのです。
3社間ファクタリングの場合も基本的には2社間のケースと仕分けの方法は変わりません。
3社間で売買取引の場合の仕分けはファクタリングの契約締結時に売掛金を譲渡して未収入金を計上します。その後、ファクタリング会社からの入金があったときには、現金預金と売上債権売却損の計上をするという流れです。3社間ファクタリングでは債務者から直接ファクタリング会社に入金されるため、これ以降の仕分けは不要です。
3社間で金融取引の場合はファクタリング会社から入金があったときに短期借入金として計上します。そして、債務者からファクタリング会社へ入金があったときには、売掛金と短期借入金を相殺する仕分けを行うのです。
売掛金を譲渡することは「金銭債権などの譲渡」とみなされます。金銭債権の譲り受けの際に発生する手数料は非課税とされているため、消費税はかかりません。消費税には非課税取引が規定されており、「金銭債権などの譲渡」は非課税取引であると国税庁が指定しています。売掛債権は金銭債権の一種とみなせるため、ファクタリングの取引で生じる手数料に消費税はかからないのです。
もし、業者が手数料に消費税を上乗せして請求してきた場合は注意しましょう。本来は消費税のかからない取引で不当に消費税を請求しているからです。悪徳業者である可能性が高いため、契約は絶対に避けましょう。悪徳業者と契約をしてトラブルに発展したケースは多いです。ファクタリングの業務は特別な許認可が必要なく、自由に開業できます。そのため、数多くの業者が生まれており、違法行為を行っているケースも少なくありません。十分に注意をして業者を見極めることが大切です。
また、通常の売掛金の取引においては売上額に消費税がかかります。そのため、ファクタリングを利用してもしなくても売上にかかる消費税の税額には違いはありません。
他にも税金が関係する場面があります。たとえば、ファクタリングで債権譲渡登記をするケースでは、債権譲渡登記に税金がかかります。登記手続きの際に登録免許税が生じるのです。登記を専門家に依頼する場合には、報酬に消費税がかかります。
ファクタリングの会計処理に関してよくある疑問と回答を紹介します。
使用している会計ソフトの種類によっては「売掛債権譲渡損」という項目が用意されていない場合があります。この場合は、「支払い手数料」「雑損失」「債権割引料」など別の項目で計上しても問題ありません。本業以外の営業損失が発生した場合の損失を計上するための項目を使うことが大切です。特に「雑損失」については汎用性があり使い勝手も良いため便利な項目として使われます。
ただし、「売掛債権譲渡損」ではなく安易に「雑損失」を利用すると税務調査で追求されるケースがあるため気を付けましょう。客観的に「雑損失」という項目を利用した根拠を説明できるならば問題ありません。
特に理由がないならば、「売掛債権譲渡損」を利用して仕分けすることをおすすめします。この場合は税務調査で厳しく理由を問われるようなことはないです。
また、「売上債権売却損」は損金として扱うことができます。会社の経費として処理できるため、きちんと計上することで法人税の節税につながるのです。
ファクタリングでは契約をしてから現金が入金されるまでにタイムラグが生じることがあります。もし決算期末をまたぐ場合には、入金されていなかったとしてもその売上に対して課税される点に注意しましょう。売上の現金化を実現していない段階で、ファクタリングの売上を元にして税金が計算されて法人税や消費税を払わなければいけません。
会計処理の際には発生主義と現金主義の違いについて理解しましょう。
発生主義とは売上が発生したタイミングで会計処理をすることで、現金主義は現金が入金されてから集計するという考え方です。
基本的にファクタリングは発生主義によって会計処理をします。これは、確定申告の際には帳簿を発生主義で記帳することが原則だからです。帳簿は統一性を図る必要があり、確定申告では発生主義が求められていることから、基本的にすべての取引は発生主義で記帳するのが原則であると考えましょう。現金主義で記帳すると税務調査で指摘を受けるリスクがあります。
ファクタリングにはさまざまなパターンがあり、それぞれの違いを理解した上で会計処理することが求められます。会計処理のやり方を誤ると税務調査で指摘されるリスクがされるため注意しましょう。申告内容が否認されれば、罰則もあります。この記事の内容を参考にして正確にファクタリングの会計処理を行いましょう。