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ファクタリングとABLの8つの違いと使い分け方法を徹底解説!

日本には多くの中小企業がありますが、中小企業は不動産や土地など担保になり得るモノを保有していないことも珍しくありません。そのため、担保が用意できないが故に、有担保融資を受けられない企業も少なくないのです。この情勢を受け、経済産業省は近年「売掛債権を活用した資金調達方法」を推奨してきています。
売掛債権を活用した資金調達方法には「ファクタリング(売掛債権流動化)」と「ABL(売掛債権担保融資)」があります。どちらも売掛債権を用いた資金調達方法で間違いありませんが、双方はまったく異なる金融サービスとなります。それぞれの特徴や違いを理解したうえで、資金調達方法を決められると良いでしょう。
この記事では、ファクタリングとABLの違いや使い分け方法を徹底解説します。

ファクタリングとは?

ファクタリングとは「売掛債権流動化」とも呼ばれるものであり、売掛債権の譲渡・売却による資金調達方法となります。ファクタリングについて、以下で詳しく解説していきましょう。

売掛債権の譲渡・売却による資金調達方法

ファクタリングとは、事業主が保有する売掛債権を、ファクタリング会社へ譲渡・売却することで、売掛金の早期現金化ができるサービスのこと。
決済期日前の売掛債権をファクタリング会社へ譲渡・売却することで、1週間以内に売掛金の現金化ができます。そして、本来の決済期日に売掛先から支払われた売掛金を、ファクタリング会社へ返還するという流れとなります。つまり、言わば「売掛金の前払いを受けられるサービス」と言えるでしょう。

そんなファクタリングですが、以下の法律のもと取引が行われています。
・2社間ファクタリング:民法第555条「売買契約」
・3社間ファクタリング:民法第466条「債権の譲渡性」、民法467条「指定債権の譲渡の対抗要件」

適用する法律からもわかるように、ファクタリングはあくまで「売掛債権の譲渡・売却」による資金調達方法なのです。

償還請求権がない

ファクタリングは、償還請求権のない契約が原則です。
償還請求権とは、譲渡・売却した売掛債権が不履行になった場合に、ファクタリング会社が利用者へ弁済を求めることができる権利のこと。ファクタリングは、原則としてこの権利がないため、売掛先の経営難や倒産などにより、売掛金の回収ができなくなった場合でも、利用者は払い戻しをする必要がありません。
つまり、ファクタリングで一度売掛金を現金化してしまえば、確実に売掛金を回収できるということです。

最短即日で資金調達ができる

ファクタリングは、最短即日~1週間程度で資金調達が完了します。
と言うのも、ファクタリングの審査には多くの時間を要さないから。銀行融資などの借入では、利用者に返済能力があるかどうか、厳重な審査が必要となります。そのため、多くの提出書類と複数回の面談が不可欠であり、審査だけで1週間~2週間程度の時間がかかることも珍しくありません。
対し、ファクタリングの審査では、売掛先がきちんと売掛金を支払えるのかが重要となります。売掛先の情報は帝国データバンクから容易に調査可能であるため、数十分~数時間で調査が完了します。さらに、ファクタリングは、利用者に赤字決算や税金滞納などがあっても問題になりません。利用者の詳細な調査が不要であるため、最短即日~1週間というスピード感に長けた資金調達が可能なのです。

負債にならない

ファクタリングで得た資金は、負債にはなりません。
なぜなら、ファクタリングはあくまで「売掛債権の譲渡・売却」であるから。借入による資金調達方法ではないため、負債を抱えることはありません。売掛金の返還も一括で行うのが原則であるため、長期的な資金繰り計画を考える必要もないでしょう。
また、負債を抱えずに現金を増やすことができるため、オフバランス効果にも期待できます。ファクタリングは賃借対照表をスリム化できるため、見栄えの良い決算書を作ることも可能なのです。結果として、企業評価を高め、銀行融資などの借入審査にも有効に働かせられるでしょう。

売掛先への通知を選択できる

ファクタリングは、売掛先への通知の有無により「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2つの方式があります。
2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社だけで契約を締結するため、売掛先が関与しません。そのため、売掛先にファクタリングの利用を知られることなく、資金調達することが可能です。売掛先へ資金繰り悪化を疑われることなく、取引関係に悪影響を与えないというメリットがある反面、手数料は10%~30%とやや割高となります。
対し、3社間ファクタリングでは、利用者とファクタリング会社と売掛先との3社で契約を結びます。3社間ファクタリングを利用する際には、売掛先からファクタリング利用の承諾を得るとともに、債権譲渡通知を送らなければなりません。必然的に売掛先へファクタリングの利用を知られてしまいますが、1%~10%という割安な手数料で利用できます。
ファクタリングは、上記2つのファクタリング方式を利用者が自由に選択できます。つまり、売掛先との関係性や取引関係を考慮したうえで、通知の有無を決めることができるのです。

債権額以上の資金調達は不可能

ファクタリングは、保有している売掛債権の額面以上の資金調達はできません。
と言うのも、ファクタリングは売掛債権の譲渡・売却による資金調達方法だから。あくまで売掛金の前払いを受けるだけなので、売掛債権の額面以上の資金調達は絶対にできません。さらには、利用時には1%~30%の手数料が発生するため、額面よりも現金化できる金額は必ず少なくなります。売掛債権の信用度により掛け目も設定されるため、予想していたよりも資金調達できる金額が少ないと思う方も少なくはないのです。

つまり、ファクタリングで早期現金化できるのは、以下のようになります。
【例:売掛金1,000万円、掛け目80%、手数料10%】
・買取額:売掛金1,000万円×掛け目80%=800万円
・手数料:買取額800万円×手数料10%=80万円
・早期現金化額:買取額800万円-手数料80万円=720万円
掛け目で早期現金化できなかった20%(200万円)は、本来の決済期日にならなければ現金化できないため、注意が必要でしょう。

ABLとは?

ABLとは「売掛債権担保融資」の略称であり、売掛債権を担保にした融資のことです。ABLについて、以下に詳しく見ていきましょう。

売掛債権を担保にした融資

ABLは、事業主が保有している売掛債権を担保に入れて融資を受ける資金調達方法です。
中小企業の多くは事業規模の小ささや、事業歴の短さ、実績不十分などが原因で銀行融資を受けられません。そこで、売掛債権を担保に入れることで利用者の信用度を補填し、融資を受けやすくするのが「ABL」となります。万が一、借入額を返済できなくなった場合には、担保に入れた売掛債権が回収され、返済に充てられます。
売掛債権があれば融資を受けやすくできるため、不動産を有さない中小企業やスタートアップ企業から重宝されているサービスと言えるでしょう。

そんなABLには、民法第587条「消費賃借」が適用されます。つまり、法律上でもABLは貸付による資金調達方法と言えるのです。消費賃借には「貸付業法」が適用となるため、ABLでは年利20%を超えるような金利設定は禁止されています。

債権不履行時には利用者が責任を負う必要がある

ABLは、債権不履行時には利用者が責任を負わなくてはなりません。
と言うのも、ABLは売掛債権を担保にしているから。担保にしている売掛債権が不履行になるということは、担保に入れたものが無価値になることを意味します。担保にした売掛債権が不履行になった場合には、一括返済を求められる可能性が高いため、注意が必要になるでしょう。

融資実行には1か月程度かかる

ABLは、融資実行までには最短でも2週間、長くて1か月程度の期間を要します。
と言うのも、ABLはあくまで「融資」であり、相応の審査が必要になるから。融資である以上、貸付をする金融機関は利用者に返済能力があるのか、厳重な調査をしなければなりません。さらには、担保に入れる売掛債権の信用度も調査しなければならず、審査に多くの時間がかかるのです。そのため、ABLは即日入金など急ぎの資金調達には、不向きと言えるでしょう。

売掛先への通知は必須

ABLを利用する際、売掛債権を担保にする旨を売掛先へ通知しなければなりません。
と言うのも、ABLでは原則として売掛先の同意が必要となるため。そのため、売掛債権を担保にして資金調達をする事実を、売掛先へ必ず知られてしまいます。資金繰りの実情を知られたくなくとも、必ず知られてしまうため注意が必要かもしれません。

多額の資金調達ができる可能性がある

ABLは、担保にした売掛債権の評価次第では、多額の資金調達ができる可能性があります。
また、売掛債権のほかにも商品在庫や材料、社用車なども担保として提出することも可能です。すべての評価額で融資可能枠が決定されるため、売掛債権の額面以上の融資にも期待できるでしょう。

ファクタリングとABLの8つの違い

上記では、ファクタリングとABLの概要や特徴について、それぞれ解説しました。ここでは、ファクタリングのABLの違いに着目して、解説していきます。

ファクタリングとABLでは、以下の8項目に違いがあります。
1, 契約内容
2, 資金調達速度
3, 資金調達できる額
4, 審査基準
5, 手数料(利息)
6, 債権不履行時の対応
7, 返還(返済)回数
8, 提供機関

1,契約内容

ファクタリングとABLでは、契約内容に違いがあります。
・ファクタリング:売買契約
・ABL:金銭消費貸借契約

ファクタリングが売掛債権の売買契約であるのに対し、ABLは金銭消費貸借契約となります。つまり、ABLは貸付による資金調達方法に該当しますが、ファクタリングは貸付によろう資金調達には該当しません。ファクタリングで得た資金は「普通預金」となりますが、ABLで得た資金は「借入金」になるという違いがあります。

2,資金調達速度

ファクタリングとABLでは、資金調達速度も大きく異なります。
・ファクタリング:最短即日~1週間程度
・ABL:最短2週間~1か月程度

ファクタリングは、審査に時間を要さないため、素早い資金調達を得意としています。したがって、2社間ファクタリングで最短即日~3日程度、3社間ファクタリングで最短3日~1週間程度で資金調達が可能です。対し、ABLは利用者の経済状況など細かな審査が必要であり、即日での資金調達はできません。審査に時間を要するため、資金調達完了までには最短でも2週間、長ければ1か月程度かかるでしょう。

3,資金調達できる額

ファクタリングとABLでは、資金調達できる額にも大きな差があります。
・ファクタリング:売掛債権の額面以上の資金調達は不可(買取金額-手数料)
・ABL:担保評価次第では高額融資の可能性あり

ファクタリングは、あくまで「売掛債権の譲渡・売却」であり、売掛金の前払いを受けられるだけのサービスです。そのため、売掛債権の額面以上の資金調達はできません。掛け目が設定され、そこから手数料も差し引かれるため、実際に早期現金化できる額は額面よりも目減りするでしょう。対し、ABLは担保が高く評価されれば、高額な融資にも期待できるかもしれません。

4,審査基準

ファクタリングとABLでは、審査基準にも大きな違いがあります。
・ファクタリング:売掛先の信用度
・ABL:売掛債権の価値と利用者の信用度

ファクタリングの審査では「売掛先の信用度」つまり、売掛先が売掛金をきちんと支払えるかが重要となります。そのため、利用者に赤字決算や税金滞納などがあっても問題ありません。銀行融資の審査に断られてしまうような状況でも、ファクタリングは利用できる可能性が高いと言えるでしょう。対し、ABLはあくまで「融資」となります。融資である以上、利用者の信用度も審査基準に含まれます。いくら売掛債権が高く評価されても、利用者に著しい金銭問題があれば、ABLの審査には落ちてしまうでしょう。

5,手数料(利息)

ファクタリングとABLには、手数料(利息)にも違いがあります。
・ファクタリング:売掛債権に対して1%~30%の手数料
・ABL:借入額に対して年利2%~10%

ファクタリングは、実際の決済期日に売掛金を一括返還するため、年利という概念が存在しません。しかし、ファクタリングには、年利に代わるものとして手数料が発生します。ファクタリングの手数料は、売却する売掛債権の額に対して、2社間ファクタリングで10%~30%、3社間ファクタリングで1%~10%が相場となります。対し、ABLは借入額に対して、年利2%~10%程度の利息が発生します。
ABLは利息制限法が適用するため、年利20%を超える年利設定をされることはありません。しかし、ファクタリングは利息制限法の適用外であるため、年利換算して20%を超えるような手数料が発生するのも珍しくないです。ファクタリングとABLには、手数料(年利)に大きな違いがあるため、注意しましょう。

6,債権不履行時の対応

ファクタリングとABLには、債権不履行時の対応にも大きな違いがあります。
・ファクタリング:債権不履行時に払い戻しの義務がない
・ABL:債権不履行時には早期返済などの対応をする必要がある

ファクタリングは、原則として償還請求権がありません。そのため、万が一売掛債権が不履行になった場合でも、利用者はファクタリング会社へ弁済する必要はありません。ファクタリング会社へ売却した売掛債権は、責任の所在もファクタリング会社へ移るため、不履行時の心配をしなくて済むのです。対し、ABLは償還請求権のある契約が原則となります。そのため、担保に入れた売掛債権が不履行になった際には、利用者が弁済もしくは、借入額の早期返済をしなければなりません。ABLは、あくまで売掛債権を担保にしているだけなので、不履行時の対応には注意が必要です。

7,返還(返済)回数

ファクタリングとABLでは、返還回数にも違いがあります。
・ファクタリング:決済期日に一括返還
・ABL:複数回にわけて返済(半年~1年程度)

ファクタリングでは、本来の決済期日に売掛先から回収した売掛金を、一括でファクタリング会社へ返還します。対し、ABLでは約半年~1年の期間をかけて、毎月固定の返済を行うことになります。

8,提供金融機関

ファクタリングとABLは、提供金融機関も大きく異なります。
・ファクタリング:金融機関よりも民間企業が多い
・ABL:銀行や消費者金融など大手企業が多い

ファクタリングを提供している機関は、民間企業がほとんどです。銀行が提供しているファクタリングもありますが、審査が厳しかったり、3社間ファクタリングに限定されていたりと、ファクタリングのメリットを十分に発揮できません。また、ファクタリングを提供するにあたり、特別な資格等の必要はなく、誰でもファクタリング会社を立ち上げることができます。そのため、なかには悪質業者の存在も確認されており、注意が必要になるでしょう。対し、ABLは銀行や消費者金融など、大手企業が提供していることも少なくありません。悪質業者はほぼいないので、安心して取引ができるでしょう。

ファクタリングとABLどちらがおすすめ?

ファクタリングもABLも「売掛債権を活用した資金調達方法」に違いありません。しかし、双方には大きく異なる点が多々あり、まったく異なるサービスとなります。
ファクタリングにもABLにも、メリット・デメリットがあるため、一概にどちらがおすすめと言い切ることはできません。利用者の状況や資金調達ニーズにより、ファクタリングとABLを使い分けるのが良いでしょう。
ここでは、ファクタリングがおすすめのケースと、ABLがおすすめのケースを紹介します。

ファクタリングがおすすめのケース

ファクタリングがおすすめとなるケースは、以下の通りです。
・資金調達を急いでいる場合
・利用者に赤字決算や税金滞納などがある場合
・短期的なつなぎ資金が必要な場合
・売掛金の未回収リスクに備えたい場合
・売掛先の与信調査をしたい場合
・企業評価を高めたい場合

ファクタリングの強みはなんと言っても「資金調達の速さ」と「不履行時に弁済の必要がない」ということ。さらに、利用者の信用度が審査に大きく影響しないため、融資の審査に通らなかったという場合にも、非常に有用です。資金調達を急いでいる場合や、負債を抱えずにつなぎ資金を確保したい場合、売掛金を回収できるか不安な場合には、ファクタリングのメリットを存分に発揮できることでしょう。
ただし、決して安いとは言えない手数料がかかる点や、売掛債権の額面以上の資金調達はできない点、悪質業者の存在には注意が必要です。

ABLがおすすめのケース

ABLがおすすめとなるケースは、以下の通りです。
・コストを抑えて資金調達したい場合
・安全に資金調達をしたい場合
・債権額以上の資金調達が必要な場合

ABLは、ファクタリングと比べると利用ハードルが高く「柔軟性」には欠けます。しかし、年利は2%~10%と低く、コストを抑えた資金調達を得意とする資金調達方法と言えます。悪質業者もほとんど存在しないため、安全面を重要視した資金調達には最適でしょう。また、売掛債権や在庫など、担保になり得るものを多く保有している場合には、高額な資金調達にも期待できます。長期的かつ多額な資金が必要な場合には、ABLの利用をおすすめします。

ファクタリングとABLをうまく使い分けましょう

ファクタリングもABLも「売掛債権」を活用した資金調達方法です。しかし、ファクタリングは「売掛債権の譲渡・売却」による資金調達方法、ABLは「売掛債権を担保」にした融資による資金調達方法であり、双方には明確な違いがあります。どちらも中小企業の資金繰り改善に役立つ金融サービスですが、違いを理解したうえで、最適なサービスを選択できると良いでしょう。

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