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ファクタリング業者を調査していると、貸金業に登録されていない業者があることに気づきます。
ファクタリングを利用しようと考えている人は、法律的に大丈夫かどうか不安になるでしょう。
はじめに結論から述べると、ファクタリングと貸金業は全く違うサービスです。
ファクタリングは売掛金をファクタリング会社が買い取る取引であり、金銭のやりとりが直接行われないため貸金業の登録が不要となっています。
一方でファクタリングの法整備はまだ追いついておらず、悪質な業者が存在しており、被害が増加しているのも事実です。
ファクタリングは安全な資金調達の方法ですが、悪質業者との取引には注意が必要です。
本記事では、ファクタリングと貸金業の違いや、貸金業を偽る悪質な業者の見分け方について解説します。
安心して取引をするために、ぜひ最後までご覧ください。
ファクタリングと貸金業は、まったく異なる金融サービスです。
では具体的にどういったところが違うのでしょうか?これらのサービスの違いについてみていきましょう。
貸金業は、利用者に金銭を貸し付け、それに対して利息をつけて返済してもらうサービスを指します。
主な貸金業者には、消費者金融、事業者金融、クレジットカード会社、リース会社、抵当証券業などが挙げられます。
銀行や信用金庫は貸金業者ではなく、銀行と区別するために、これらを「ノンバンク」と呼んでいます。
貸金業を営むためには財務局や各都道府県行政庁に登録が必要であり、登録後は3年ごとに更新が求められます。
また、貸金業法には借入総額や利息の上限、返済金の取り立て方法などが詳細に規定されており、これらを遵守することが貸金業者の義務とされています。
貸金業を運営するには、多大な費用と労力が必要となってきます。
ファクタリングは企業や事業主が所有する売掛金を、ファクタリング会社に売却することで、即座に資金を調達する金融手法です。
売掛金とは商品やサービスの売上代金を受け取る権利のことで、売掛債権ともいいます。
通常の取引では、商品やサービスの販売後に支払われる代金が1か月から2か月かかることが一般的ですが、ファクタリングを活用することで、この期間を短縮できるのがメリットです。
具体的には、売掛債権をファクタリング会社が買い取り、手数料を差し引いた額を利用者に支払うことで早期資金調達が可能になります。
この方法により、企業は売上が発生した瞬間から即座に資金を手に入れることができ、経営しやすくなります。
このように、ファクタリングは売掛債権を買い取るサービスのため、金銭を貸し付ける通常の金融融資とは異なり、貸金業には該当しません。
そのため貸金業への登録が不要です。
資金調達の手段としてファクタリングを利用する際は、特性を理解し合法かつ安全な方法でサービスを受けることが重要です。
一方で貸金業登録が必要な例外もあります。以下の2つの場合は貸金業登録が必要です。
契約で償還請求権あり(リコース)かどうかの確認を徹底しましょう。
償還請求権がある場合、売掛先から売掛金が回収できない際に、ファクタリング会社が申込企業に返済を求める権利が発生します。
これにより、契約企業は回収できない売掛金に対して資金を返済しなければなりません。
このような償還請求権があるリコース契約の場合、金融庁の定義により「資金を貸し借りする契約」に該当し、ファクタリング手数料は利息と見なされます。
金銭を貸し借りしているとみなされるため、ファクタリング会社は貸金業登録が必要です。
一方で、償還請求権がないノンリコース契約の場合、ファクタリング会社が回収リスクを負担するため、利用者は回収できなくても返済の必要はありません。
売掛債権を買い取るのみで金銭の貸し借りは発生しないので、貸金業に登録しなくても業務が行なえます。
償還請求権ありのファクタリング会社と契約する場合は、貸金業に登録してあるかチェックした方が良いでしょう。
稀に貸金業登録をせずに経営している悪質な業者も存在するため、契約前に注意深く確認することが重要です。
給与ファクタリングは、従業員が受け取るべき賃金を支給日前に現金で手に入れるサービスです。
ただし、賃金債権は売掛債権とは異なり、労働基準法の規定によりファクタリングの適用が除外されています。
金銭の貸し借りが発生するため、金融庁は給与ファクタリングを貸金業に該当すると見なし、業者は貸金業登録が必要であると指摘しています。
給与ファクタリング業者の中には、無登録業者が多く存在し、金融庁やファクタリング協会は無登録業者による不法な金銭貸付契約に対して警告を発しています。
ファクタリングを名目にして実質的な貸金業を行う業者には注意が必要であり、ヤミ金業者の可能性もあるため、慎重に対処する必要があります。
ファクタリングと貸金業は異なる特徴があるため、それぞれの立場によって向き不向きがあります。以下に、どちらが適しているかを簡潔にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
ファクタリングが向いているケース
● 経営が悪化し、銀行融資が難しい場合
● 一時的なキャッシュフローの悪化で急な資金調達が必要な場合
● 売掛先の理解があり、3社間ファクタリングが可能な場合
● 手数料を支払ってでも確実に現金を早めに受け取りたい場合
● 売掛先の信用が高く、手数料を低く抑えることが可能な場合
● 決算期近くで、貸金を決算書に載せたくない場合
貸金業が向いているケース
● 費用(支払利息)を節約したい場合
● 長期の資金調達を行い、計画的に返済したい場合
● 法的な守りが強くトラブル時の安心感を求める場合
● ファクタリングのリスクが不透明で、安全性に不安がある場合
ファクタリング業者が適切に営業する場合は法的な問題は発生しませんし、安心して利用できます。
しかし、中には悪質な業者も存在するため、注意が必要です。
通常、ファクタリング業者は貸金業の登録が不要ですが、これを悪用した偽装ファクタリングが行われることがあります。
偽装ファクタリングは、貸金業の登録を受けていないか、受けられない業者が法を回避して貸付をする手法です。
登録を受けている業者は基準をクリアしており、金融庁の監督下で法令を順守しているため、利用者にとっては安全です。
一方で、悪質な業者は法を無視し、自らの利益を最優先に考えます。その結果、利用者が多重債務に陥ったり、社会的信用を損ねたりすることがあります。
以下は悪質な業者が実際に行った手口の一例です
● 安い手数料で勧誘し、後で法外な金利を要求する
● 売掛先から代金が回収できないときに、利用者に請求してくる
どちらのケースでも、利用者が要求に応じないと、悪質な取り立てや売掛先に知らせるといった脅しに及ぶことがあり、支払いを強制して実行されるまで悪質な行為が続くでしょう。
このようなトラブルを回避するためにも、以下で詳しく解説しますので参考にしてください。
悪質なファクタリング業者は、他社よりも安い手数料で顧客を勧誘する手法を取っています。
ファクタリング契約を装いながら、実際には金銭消費貸借契約(貸付)を結び、代金を利用者が振り込むという手続きをします。
最終的に利用者が売掛先企業から入金された代金を振り込むときに、手数料のみならず高額な利息も要求してきます。
ファクタリングで発生するのは手数料であり、これは売掛金の買取金額から差し引かれるものです。
利息は貸借した金銭に対する対価であり、ファクタリングにおいては発生しません。利用者が利息を支払うのは貸金業にあたり、ファクタリングとしては不正な行為です。
ファクタリングは売買契約であり、売掛金(売掛債権)は買取代金と引き換えにファクタリング会社に譲渡されます。
この際、債権の回収リスクは通常、ファクタリング会社が負うものです。
しかし、売掛先の倒産により回収不能となった場合、ファクタリング会社がリスクを負わず、代わりに利用者に回収責任を転嫁する状況が発生しています。
また違約金まで請求してくるファクタリング業者もいます。
それでは悪質なファクタリング業者はどういった特徴があるのでしょうか?ここでは悪質なファクタリング業者の見分け方を解説します。
● 相場より手数料が高い
● 利息や金利を請求される
● 償還請求権ありの契約になっている
● 悪質な取り立てをしてくる
手数料を高く設定するのも、偽装ファクタリング業者が用いる手法の一つです。
手数料はファクタリング業者や売掛先の信用度によって異なり、一般的な相場は以下の通りです。
● 2社間ファクタリング: 10%~30%
● 3社間ファクタリング: 1%~9%
もし提示された手数料がこれらの相場よりもはるかに高い場合、不当な金額である可能性が高いでしょう。
また手数料には振込手数料や事務的経費が含まれることが一般的であり、それらが別請求になっていないか、不透明な項目がないかも確認する必要があります。
特に初めてファクタリングを利用する場合は、わからないことも多いでしょう。
複数の会社に見積もりを依頼し、手数料や契約書を確認することが重要です。
もしも、ファクタリング会社が金利や利息を要求してくる場合は、信頼性を疑うべきです。
ファクタリングを利用する際に発生する費用は通常手数料であり、金利や利息ではありません。
これらの請求がある場合、悪質な業者の可能性が高いでしょう。
特に償還請求権のないファクタリングでこれらの費用が発生する場合は、ファクタリングを装って貸金業を行っている可能性が考えられます。
このような状況では、貸金業法に違反する不正な業者の可能性があるため、慎重に検討する必要があります。
通常、ファクタリング契約は償還請求権なしのノンリコースであることが一般的ですが、償還請求権が含まれている場合は、慎重になる必要があります。
これは悪質な業者の可能性がある兆候です。貸金業登録がある場合は例外となりますが、その場合はファクタリングではなく融資と見なされます。
ファクタリングという名目で融資を受けることは、借入金が増えることになります。
サービスを利用する際には、利用者が貸金業とファクタリングの違いを理解し、契約内容を確認することが重要です。
もし仮に、償還請求権ありのリコース契約でファクタリングを利用したら、売掛先からの回収が難しい場合、利用者はファクタリング会社に資金を返済する必要があります。
状況によっては、返済が遅れてしまうこともあるでしょう。
しかし、返済が遅れる状況であっても、ファクタリング会社からの「深夜や早朝の電話」「暴力・脅迫」などの悪質な取り立てがある場合、貸金業法の登録の有無に関わらず、貸金業法違反です。
ファクタリングにおいては取り立て行為に関する明確な規制はないものの、度が過ぎた悪質な取り立ては原則として違反行為に該当します。
このような状況では悪徳業者と思って間違いないので、被害を受けた場合は警察や適切な相談先に連絡し、適切に対処することが重要です。
貸金業法は、貸金業者の健全経営を確保し、個人消費者を保護する法律です。
一方、ファクタリングは通常、事業者間での売掛金の売買契約であり、貸金業法の対象ではありません。
ただし、売掛金の回収ができなくなった場合、契約によっては利用者がその責任を負うことがあります。
この場合、取引がお金の貸し借りに関わるものと見なされ、相手業者は貸金業登録が必要です。
少しでも怪しいと感じた場合は、具体的な契約内容を確認し、契約書をもらうよう努めましょう。悪質な取り立てなどには、警察に相談するなどの対応をおすすめします。
ファクタリングと貸金業は異なるサービスであり、混同しないよう注意が必要です。
本記事を通じて、ファクタリングと貸金業の違いを理解し、悪質なファクタリング会社から身を守り、適切な資金調達を行う際のポイントを押さえましょう。