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ファクタリングという方法で資金調達を考えている方、またすでに利用しているという方も多いでしょう。
ファクタリング契約にはさまざまな条件があります。
中でも注目すべき条件が「償還請求権」です。
今回は償還請求権とは何なのか、ファクタリング契約の際必要なのか不要なのかをみていきましょう。
また償還請求権アリでファクタリング契約するメリットやデメリットはあるのかなど、償還請求権とファクタリング契約について解説していきます。
ファクタリングをする際、契約にはさまざまな条件がつきます。
そういった条件のひとつが「償還請求権」です。
償還請求権とは「リコース」とも呼ばれます。
償還請求権アリで結ぶファクタリング契約を「リコース契約」、ナシで結ぶのを「ノンリコース契約」と呼ぶこともあります。
償還請求権とは金銭債権をもつ債務者から金銭の支払いがなかった時、元々その債権を持っていたものが、弁済しなければいけない権利のことを指すのです。
分かりやすくファクタリング契約の例で説明してみましょう。
ある企業が100万円の売掛債権を15%の手数料で、ファクタリング契約(償還請求権アリ)したとします。
この企業は契約が成立した時点で、売掛債権の額面金額から手数料を差し引いた85万円の現金を手にし、売掛債権をファクタリング会社に譲渡するのです。
この売掛債権の債務者である取引先が、売掛金の入金日までに入金を行わなかった場合、ファクタリングを申し込んだ企業が、その売掛金100万円を肩代わりします。
そしてファクタリング会社に支払わなければいけなくなるのです。
これが償還請求権アリの契約です。
同じ契約でも償還請求権がない契約の場合、売掛債権はファクタリング会社に渡っています。
そのため申し込んだ企業が100万円を肩代わりする必要はありません。
この説明だけを見れば、償還請求権ナシの契約の方が圧倒的に有利で、誰も償還請求権アリの契約は望まないようにみえるでしょう。
しかし現実に償還請求権があるファクタリング契約も存在します。
ファクタリング契約にもさまざまなケースがあります。
基本的なシステムとしては、売掛債権を譲渡し早期現金化を図る契約です。
以下ではファクタリング契約において、償還請求権は必須なのか、このあたりを解説していきましょう。
結論からいってしまえば、ファクタリング契約において償還請求権の設定は必須ではありません。
多くのファクタリング会社があるなか、償還請求権を設定する会社と設定しない会社があります。
また会社によっては償還請求権の設定を選べるケースもあります。
それではなぜファクタリング契約において、償還請求権の有無を考える必要があるのでしょうか。
このポイントに関して解説していきましょう。
ファクタリングという資金調達方法の特徴として、「借り入れではない」という点があげられます。
ファクタリングを申し込んだ企業は、自社が持つ売掛債権を譲渡します。
その対価として現金を受け取っているわけで、お金を借り入れているわけではないのが基本です。
しかしここに償還請求権が加わると、契約内容が大きく変わります。
償還請求権アリのファクタリング契約は債権譲渡契約ではなく、売掛債権を担保とした金銭の賃貸契約という形に変わります。
償還請求権があることは「その売掛債権が現金化されてもされなくても、期日までにファクタリング会社に入金しなくてはいけない」という契約になるのです。
つまり売掛債権を担保とした貸金契約となります。
実際に裁判で償還請求権アリのファクタリング契約は、貸金契約であると認めた判例もあります。
償還請求権アリのファクタリング契約を結べるのは、貸金業法に則り営業している貸金業者のみです。
償還請求権があるファクタリング契約は、契約を申し込む側から見れば万が一のリスクが大きく、できれば避けたい契約のように見えます。
しかし償還請求権アリの契約を結ぶには、それだけのメリットがあるのも事実です。
そこで償還請求権のアリの契約における、メリットとデメリットを紹介していきましょう。
償還請求権アリでファクタリング契約を行う最大のメリットは、手数料の安さです。
ここではファクタリング契約なので「手数料」という言葉を使いました。
しかし償還請求権アリのファクタリング契約の場合、実際には「手数料」ではなく「利息」になります。
なぜ手数料が安くなるのか、それは償還請求権アリのファクタリング契約は、債権譲渡契約ではなく債権を担保とした貸金契約だからです。
貸金契約を結ぶ以上、利息においても貸金業法が定める利息の範囲内で決める必要があります。
貸金業法における利息の上限は以下の通りです。
• 借入金10万円未満 → 上限年利20%以内
• 借入金10万円以上100万円未満 → 上限年利18%以内
• 借入金100万円以上 → 上限年利15%以内
仮に100万円で2か月後に入金予定の売掛債権を担保に、償還請求権アリのファクタリング契約を結ぶとします。
この際の手数料(利息)の上限を計算してみましょう。
額面が100万円ですから、貸金業法における利息の上限は15%です。
ただしこれは年間でかかる利息「年利」です。
この年利から2か月間でかかる利息を計算すると、約2.5%が利息の上限となります。
つまり償還請求権アリで契約すれば、手数料(利息)は2.5%以内で収められるのです。
後に説明しますが、これは2社間ファクタリングの手数料相場と比較すると、非常に低い数値となります。
手数料(利息)を大幅に抑えられる。これが償還請求権アリのファクタリング契約を結ぶ大きなメリットとなります。
デメリットはなんといってもそのリスクの大きさでしょう。
仮に債務者である取引先が、売掛金の入金日を前に倒産するなどの事態が発生したとします。
ファクタリングを申し込んだ企業は、大きなマイナスを背負うことになります。
償還請求権アリのファクタリング契約は、手数料(利息)が安いという点も踏まえても、これは大きなデメリットです。
仮に100万円で2か月後入金予定の売掛債権を、償還請求権アリのファクタリング契約をしたとしましょう。
その手数料(利息)が2%だったとします。
ファクタリングを申し込んだ企業は、契約が成立した時点で98万円の現金を手にします。
2か月後取引先から入金があったら、100万円をファクタリング会社に支払うことで契約は完了です。
万が一この2か月の間に取引先が倒産してしまったら。それでも2か月後には100万円入金が必要となります。
償還請求権アリのファクタリング契約を結ぶ場合は、取引先の財務状況などを十分にチェックしましょう。
間違いなく支払いがあると確信できる場合、もしくは入金がなくても返済に対応できるという場合を見極めて、申し込む必要があります。
償還請求権アリのファクタリング契約にメリットとデメリットがある以上、償還請求権ナシの契約にもメリットとデメリットがあります。
その点について解説していきましょう。
償還請求権ナシでファクタリング契約をした場合、売掛債権の譲渡契約が締結された時点で、債権のみ回収リスクを追う必要はなくなります。
償還請求権はないため万が一取引先が倒産するなど、売掛金が回収できないという事態になっても、その回収を行うのはファクタリング会社になります。
ファクタリングを申し込んだ企業は、売掛債権を早期に現金化し、その後のことはすべてファクタリング会社にお任せという形です。
万が一のリスクに備えられるでしょう。
償還請求権ナシでファクタリング契約を行う最大のデメリットは、なんといっても手数料が高くなるという点です。
一般的なファクタリング契約の手数料相場は以下の通りです。
• 2社間ファクタリング → 10~30%
• 3社間ファクタリング → 1~9%
償還請求権ナシのファクタリング契約は、債権譲渡契約であり貸金契約ではありません。
貸金契約ではないことは、貸金業法が定める上限金利とは関係なく、ファクタリング会社が独自に手数料を設定できるのです。
その設定の相場が上記になります。
額面100万円、2か月後入金の売掛債権を償還請求権アリでファクタリング契約をした場合、手数料(金利)の上限は約2.5%と書きました。
これと比べると非常に高い手数料が必要になります。
ファクタリング契約に置ける手数料は、単純に考えて自社の売り上げの損失と考えられます。
100万円の仕事をしたのに、手数料が15%かかれば手にできる現金は85万円です。
15万円売り上げが下がることになります。
ファクタリング契約における手数料は、決して安いものではありません。
またファクタリングを利用してでも現金を用意する必要がある企業にとっては、なおさら大きいといえるでしょう。
この手数料の高さが償還請求権ナシで契約する、最大のデメリットといえるでしょう。
ここまで償還請求権とファクタリング契約に関して、説明していきました。
それを理解したうえで、償還請求権アリのファクタリング契約を考えているという方もいるでしょう。
もちろん償還請求権をつけることで、手数料(利息)を大幅に抑えられるのは魅力です。
その判断が間違っていることはありません。
そこで償還請求権アリでのファクタリング契約を考えている方に、注意しておくべきポイントを紹介しましょう。
償還請求権アリのファクタリング契約は、債権譲渡契約ではなく貸金契約、つまり融資と同じになります。
ファクタリングという形ながら融資を受けることは、それだけ自社の借入金が増えることです。
もちろん返済がきちんと終われば借入金は減ります。
しかし借り入れた実績を作ることになるでしょう。
これは後に金融機関から資金融資を受けるとなった際、マイナスに作用する可能性があります。
事業拡大や運転資金の確保のため、金融機関に資金の融資をお願いするというのは、企業を経営している以上起こりうるものです。
そういった資金融資の際には厳格な融資審査が行われます。
融資の審査においては借入金の返済計画や、その返済計画を実行するための事業計画書などが必要となります。
合わせてチェックされるのが借入金の額や、それまでの借り入れ実績です。
借り入れ実績が多くなれば、金融機関も「この企業は常に資金繰りに苦労している」という印象をもちやすくなります。
当然ですが融資審査にも通りにくくなります。
償還請求権アリのファクタリング契約は、確かに魅力的な手数料(利息)で現金を手にできる方法です。
しかし使いすぎには注意が必要といえるでしょう。
償還請求権アリのファクタリング契約は、貸金契約であり契約を結べるのは貸金業者として、金融庁に登録している業者のみとなります。
そのため償還請求権アリのファクタリングサービスを行っているのは、経営母体が銀行系や消費者金融系の、貸金業登録を行っている会社のみです。
しかし償還請求権アリのファクタリング契約が、貸金契約になることを知らない方も多いでしょう。
ファクタリング業者の中には貸金業登録をせずに、償還請求権アリの契約をもちかける違法業者も存在します。
そもそもファクタリングに関しては、現状では法整備が追いついていない業界です。
そのため開業にあたっての登録や、開業に必要な免許・資格がなく、比較的誰でも開業できる業種となっています。
つまりそれだけ悪徳業者がいる可能性も高い業界です。
償還請求権アリでのファクタリング契約は貸金契約になると知っていながら、貸金業者としての登録もせずにサービスを提供している会社もあります。
その場合「闇金」と呼ばれる業者と、同等の違法業者といえるでしょう。
償還請求権アリでのファクタリング契約を目指す場合は、かならず貸金業登録を行っている会社と契約するようにしましょう。
償還請求権とは売掛債権が現金化できない、回収できないといった事態に陥った場合に使用できます。
元々売掛債権をもっていた企業に弁済を求められる権利です。
売掛金の入金までに取引先が倒産するなどのアクシデントがあった場合、大きな支出が必要になるリスクのある契約となります。
その反面手数料(利息)を、大幅に抑えられる契約でもあります。
利用の際は十分検討したうえで利用するようにしましょう。
また償還請求権アリのファクタリング契約は、債権譲渡契約ではなく貸金契約となります。
この契約が行えるのは、貸金業者として登録を行っている会社のみです。
契約相手の会社がしっかりと貸金業の登録ができているのかどうか、チェックしたうえで契約するようにしましょう。