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ファクタリングと手形の違いとは?5つの違いと利用すべき場面、今後の動向を徹底解説

ファクタリングは売掛債権をファクタリング業者へ譲渡・売却することで、売掛金の早期現金化ができるサービスです。似たようなサービスに「手形割引」がありますが、双方は似ているようで大きな違いがあります。手形割引とファクタリングの違いを理解していないと、思わぬところで損してしまうかもしれません。
この記事では、ファクタリングと手形割引の違いや、それぞれ利用すべき場面を解説します。この記事を読むことで、ファクタリングと手形割引の明確な違いを理解でき、資金調達方法の選択・使い分けを正しくできるようになります。また、今後の動向も解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

手形とは

日本の企業間取引のほとんどは信用取引であり、商品やサービスの提供が行われてから実際に支払いが行われるまで約1~2ヶ月の期間を要します。手形とは、この企業間取引において、請求された金額を支払期日までに支払うことを約束する「証明書」のことです。
手形を発行することで、商品やサービスに対する代金の支払いを遅らせることができるため、まとまった金額を準備する猶予が生まれるというメリットがあると言えるでしょう。
手形の歴史は長く、始まりは江戸時代、法的整理がされたのは明治時代となっています。古くから利用されている手形とは、一体どんな物なのか、以下に詳しく解説していきます。

手形の種類

手形には「約束手形」と「為替手形」の2種類があります。それぞれどんなものなのか、詳しく見ていきましょう。

約束手形

一般的に「手形」というと、この約束手形を指します。
約束手形とは、手形を発行した企業(振出人)が手形を受け取った企業(受取人)に対して、特定の期日までに所定の金額を支払うことを約束する支払い手段。支払期日と支払金額を記載した手形用紙を受取人へ渡し、受取人が支払期日に銀行で手続きをすることで、支払金額を受け取るという仕組みとなっています。
約束手形は振出人と受取人の2者間のみでのやり取りが原則。つまり、A社がB社へ約束手形を発行した場合、A社が銀行へ振り込んだ代金をB社が受け取ることになります。

為替手形

為替手形とは、振出人と受取人だけの約束ではなく、間に第三者が介入して、代わりに支払いを行うという特殊な支払い手段です。
為替手形の場合、A社がB社へ直接支払いをするのではなく、間に入ったC社に為替手形を発行し、C社が代わりにB社へ支払いを行う仕組みとなります。このように3社間で行われる手形を為替手形と言います。しかし、為替手形は手形利用のわずか10%程度であり、利用者は少ないです。

手形割引|約束手形を用いた資金調達方法

手形割引とは「約束手形」を用いた資金調達方法です。
手形は通常、決済日にならなければ現金化することができません。しかし、手形割引を用いれば、決済日を待たずとも現金を得ることができます。約束手形を割引業者へ譲渡・売却する際に、手形額面上から手数料が割り引かれるため「手形割引」という名称がつけられました。手形に記載されている満額を手に入れることはできませんが、決済日前に現金を受け取れるため、急ぎで現金が必要な場合に利用されることが多いサービスとなっています。

ファクタリングと手形割引の違い

手形割引の解説を見て「ファクタリングとなにが違うんだろう?」と思った方もいるのではないでしょうか?
ファクタリングも手形割引も、売掛債権を譲渡・売却することで現金を得る資金調達方法で間違いありません。双方は「売掛債権の早期現金化」ができるサービスであり、似た性質を持ちます。しかし、ファクタリングと手形割引には明確な違いもいくつか存在します。
ファクタリングと手形割引の違いは、以下の5つです。

  1. 買取対象となる売掛債権
  2. 債権不履行時の対応
  3. 審査基準
  4. 手数料
  5. 業者の信頼性

買取対象となる売掛債権

ファクタリングと手形割引では、買取対象となる売掛債権の種類が違います。ファクタリングの買取対象は「売掛金」であるのに対して、手形割引の買取対象は「約束手形」となります。
ファクタリングの買取対象である売掛金は「商品やサービスに対する代金を将来的に支払う」という口約束のもと、発生するものです。そのため、売掛先は約束通りに支払う義務がありますが、約束した支払期日までに代金を支払えなくても法的に罰せられることはありません。
対し、手形割引の買取対象である約束手形には制度的な保障があります。手形の不渡りを半年間に2回以上発生させた場合、振出先企業は銀行取引の停止処分を受けます。処分を受けた日から2年間は、当座勘定取引および融資取引を行うことができません。実質的には会社経営が行えなくなる可能性が高いと言えるでしょう。また、1回でも不渡りを起こせば社会的信用をなくすため、不渡りを起こさないよう、売掛先も必死に対応する可能性が高いです。

債権不履行時の対応

ファクタリングと手形割引では、債権不履行時(売掛先の倒産や経営悪化により支払いができない状態)の対応も違います。
ファクタリングは、原則償還請求権のない契約を結びます。そのため、ファクタリング業者は売掛金の回収ができなくても、利用者に弁済を求めることができません。つまり、ファクタリング業者は、売掛金の未回収リスクも含めた上で、売掛債権の買取を行っていることになります。ファクタリングは、一度売掛債権を譲渡・売却してしまえば、債権不履行時の心配は無用と言えるでしょう。
対し手形割引は、償還請求権のある契約。手形の不渡り時には、利用者は払い戻しをしなければなりません。割引業者へ手形を譲渡・売却しても、手形の支払期日を過ぎてきちんと支払いが行われるまでは安心できません。

審査基準

ファクタリングと手形割引では、審査基準にも違いがあります。
ファクタリングは、償還請求権のない契約を結ぶため、売掛先の与信を重要視します。つまり、売掛先がきちんと売掛金の支払いができるかどうかが重要。利用者に赤字経営や財務超過などの金銭的な問題があっても、ファクタリングは審査に通過できる可能性が高いです。
対し、手形割引は償還請求権のある契約。言わば、約束手形を担保に融資をしている仕組みに近いと言えます。そのため、手形割引では利用者の与信も審査基準に含まれます。手形割引は、利用者に金銭的な問題がある場合には審査に落ちる可能性もあるでしょう。

手数料

ファクタリングと手形割引は、手数料設定にも違いがあります。
ファクタリングは、買取額に対して1~30%の手数料が発生します。2社間ファクタリングで10~30%、3社間ファクタリングで1~10%がファクタリングの手数料相場。これは、金利換算すると12~360%と非常に高い手数料となりますが、ファクタリングは売掛金の未回収リスクも含めた買取であるため、妥当と言えるでしょう。
対し、手形割引の手数料は年利1~20%。銀行で1~5%、割引業者で5~20%が手形割引の手数料相場となっています。手形は不履行時の罰則が厳しく、売掛先は必死になって支払いをする可能性が高いと言えるでしょう。また、売却した手形が不渡りになった際には、利用者へ払い戻しの義務もあるため、手数料は比較的低い設定となっています。

業者の信頼性

ファクタリングと手形割引には、業者の信頼性にも違いがあります。
ファクタリングは売掛金の譲渡・売却であるため、貸金業法の対象外となります。貸金業法の対象であれば貸金業登録をしなければなりませんが、ファクタリング業者はその必要がありません。そのため、ファクタリング業界には一定数の悪徳業者が存在しています。悪徳業者に騙されるリスクがある点は、ファクタリングのデメリットと言えるでしょう。
対し、手形割引は融資に近い仕組みであるため、貸金業法の対象となります。手形割引を提供するためには、貸金業登録は必須。そのため、悪徳業者がおらず、業者の信頼性は高いと言えるでしょう。

ファクタリングと手形割引どちらを利用するべき?

ここまでファクタリングと手形割引の違いについて、詳しく解説しました。ファクタリングにはファクタリングのメリット・デメリット、手形割引には手形割引のメリット・デメリットが存在します。そのため、一概にどちらが良いとは言い切れません。利用目的や所有する売掛債権の種類により、使い分けができるといいでしょう。
どういったケースでの利用をおすすめできるのか、以下に解説していきます。

貸し倒れリスクを回避するならファクタリング

貸し倒れリスク、つまり、確実に売掛債権を回収したい場合にはファクタリングがおすすめです。
ファクタリングは償還請求権のない契約であるため、売掛先が支払いを行えなくても弁済する必要がありません。売掛先の経営が怪しそう、売掛金をきちんと回収できるか不安、という場合にはファクタリングを利用するのが良いでしょう。

手数料を抑えたいなら手形割引

利用手数料を抑えたい場合は、手形割引がおすすめ。
ファクタリングの手数料は1~30%であり、金利換算すると12~360%もの非常に高い手数料が発生します。手形割引であれば年利1~20%の手数料であり、かなり手数料を安く抑えることができます。手形割引もファクタリングも比較的高額な取引が行われることがほとんど。「たかが手数料。数%の差。」と思っていると、数十万円損する可能性もあります。
約束手形も売掛金もどちらも所有している場合には、手数料の低い手形割引を用いて資金調達するのも良いかもしれません。

ファクタリングと手形割引の今後の動向

ファクタリングと手形割引、どちらも売掛債権を用いた資金調達方法です。国の施策として誕生した資金調達方法ですが、今後の動向はどうなるのか、詳しく解説していきましょう。

ファクタリングは経済産業省も推奨

ファクタリングは、比較的歴史の浅いサービスです。まだまだ知名度は高いとは言えず「ファクタリングってなに?」「怪しいサービスじゃないの?」と思っている方も少なくありません。
しかし、経済産業省は、ファクタリングに関して「銀行融資を受けづらい中小企業や個人事業主の資金調達手段」として、ファクタリングの利用を推奨しています。利用しやすい環境作りのため、金融庁の協力も仰いで知名度の向上と、正しい認識の定着を働きかけています。実際にファクタリングを利用する企業も増加傾向にあり、今後ますます成長していくことが予測されるでしょう。

手形割引は2026年に廃止予定

手形の歴史は長く、明治時代から法的整理が行われ、日本に慣れ親しんだサービスと言えます。しかし、手形という「用紙」を取り扱うことで、管理リスクがあるほか、印紙代や郵送費など取引の過程で生じるコストと時間が多いという問題があります。実際、手形の利用率は減少傾向にあり、売掛金への移行が急速に進んでいます。この経緯を受け、経済産業省は手形制度を2026年に廃止する意向を固めています。
これらの理由から、今後は手形割引ではなくファクタリングの利用者が増えることが予測されるでしょう。

まとめ:違いを理解して自分に合ったサービスを選びましょう

この記事では、ファクタリングと手形割引の違いと使い分け、今後の動向について解説しました。
ファクタリングも手形割引も売掛債権を用いた資金調達方法です。しかし、ファクタリングは「売掛金」、手形割引は「約束手形」を譲渡・売却するという違いがあります。そして、双方の大きな違いは「債権不履行時の対応」と言えるでしょう。ファクタリングは弁済の義務がありませんが、手形割引は払い戻しをしなければなりません。確実に現金を得たい場合はファクタリング、手数料を低く抑えたい場合は手形割引を利用するのが良いでしょう。
ただし、手形制度は2026年に廃止する予定であり、今後はファクタリングの需要がさらに高まることが予測されます。経済産業省もファクタリングの利用を推奨しているため、将来的にはファクタリングの利用者が増えることでしょう。ファクタリングと手形割引の違いを正しく理解し、自分に適した資金調達方法を選びましょう。

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